「公衆衛生情報」 2002/05

NPOからみた公衆衛生

座談会

 出席者(発言順) 池田晶子氏(NPO法人21世紀協会理事長)

          石川治江氏(NPO法人ケア・センター代表理事)

          楠本高敏氏(児童虐待防止協会運営理事長)

          菅原由美氏(訪問ボランティアナースの会キャンナス代表)

          寺元忠司氏(NPO法人日本食品危害研究所理事長) 

 司会  小林秀資氏(国立保険医療科学院長)

【概要】

 地域ニーズへの対応策を具体化し、行政では考えもつかない斬新かつ適切なサービスを提供するNPO。公衆衛生行政の既存の枠組みの限界を感じ、新たな活動の羅針盤として時代の先端を走る彼らにとって、地方自治体や保健所、あるいは公衆衛生関係者はいったいどのように映っているのか。地域で新しい提案と実践を重ねるNPOの論客が集まり、公衆衛生への提言を熱く語った。

【活動紹介】

u       途上国で衛生環境の整備に従事する

u       在宅ケアや虐待防止など行政の不備に手をつける

u       潜在看護師を掘り起こし介護サービス提供(抜粋)

(菅原) 地域の高齢者の介護のために何かできないかと、退職後に仕事をしていない潜在看護師たちに呼びかけて活動 をスタートしました。100万人いると言われている潜在看護師が活躍すれば、人生の最期を在宅で過ごすお手伝いができま す。私自身、退職後すぐ家庭に入ったので、地域の役に立ちたかったんです。また、介護しながら子育てもしたので、やさし く家族に接するには、息抜きの時間をどこかで提供しないと介護虐待が起きるなと感じました。そういう理由で、潜在看護師の掘り起こし、ターミナルケア、レスパイトケアをしています。

 私たち実は、NPO法人格をとっていません。というのも、設立当初、看護職といえども医師の指示がなく医療行為をするのは問題だ、家族がやっていることであろうと患者さんの顔をふいてもいけないと行政からクレームがあって、看護師免許を取り上げるという大騒ぎになりました。その後、お役所から草の根団体に口を出したのは越権行為であったと最終的な決着がついたといういきさつがあったのでそのままにしています。

看護師は医師の指示なしに動くべからずというのが保健所の見解で、その辺が制度的にはっきりしていないまま法人格をとると、またうるさく言われるので躊躇しています。でも、地域は評価してくれ、いまでは全国6ヶ所で活動をしております。

 

u       食品衛生の検査を訓練する機会を提供

u       教育支援が大切な公衆衛生活動と認識

 

【提言】

u       情報共有を含めたインフラ整備が公衆衛生

u       虐待予防で連携し保健師の情熱に打たれた

u       公衆衛生の怠慢を国民も自治体もテストされている

u       行政の保健師ももっとボランティア参加を(抜粋)

 (菅原) 私たちの組織がやっている潜在看護師の掘り起こしは、看護師の管理をする保健所の仕事のはずですよね。ところが、その管理はいいかげん。たとえば、私の住民票は今静岡県にありますが、看護師のライセンスは鎌倉市にあります。うちのスタッフたちも、旧姓のまま北海道とか遠いところにおいてあって、本人だけは藤沢市に住んでいるとか、管理らしい管理はまったくないというのが現実です。看護系の大学が増え、100万人も潜在看護師がいると言われているのに、看護師が足りない、足りないと、永久の研究テーマみたいに言われるのは、結局はみんな管理がいいかげんで埋もれているからですよね。

 看護師の管理をする組織をきちっと持って、市町村にどのぐらい看護師が潜在しているかをある程度把握できれば、阪神・淡路大震災のような災害時に役立つと思うんです。

 在宅ケアも今以上にサポートできます。介護保険導入時にホームヘルパーを70万人養成すると聞いたときに、私は100万人の潜在看護師の掘り起こしが先だと思いました。救命救急で働けるような能力は持ち合わせてなくても、在宅の患者さんのおむつを替えたり、ガーゼを取り替えたりすることは十二分にできる。地域の役に立ちたい看護師は多いのに、その場がなかなかない。うちの事務所には200人以上の看護師が登録しています。個々に呼びかければ、そのくらいのニーズはあるんですね。ですから、そういうことを行政はもうちょっとやってほしいと思います。

 私たちの活動はいわゆる有償ボランティア活動なんですが、行政保健婦は優勝ボランティアができないと思っていて、参加がないんです。登録してくれた看護師さんは上司から怒られ、登録を撤回させられたというケースもあります。公務員もボランティア活動にもっと参加してほしいですね。

u       障害児の親の再教育や子ども政策を手厚くすべき

u       少子化対策は社会保障改革とセットで

u       食品衛生の国の努力光るが産地表示では問題あり

u       公衆衛生に公共の概念があるなら、寄付も視野に

u       行政の拡充では解決しないNPOと国民の協働が必要