「GP net」  2004年1月

GPnet Special              今、居宅療養管理指導を再考する

  居宅療養管理指導におけるケアマネジャーの役割ーケアマネジャー1期生として

ケアマネの燃え尽きを防ぐために医師会とのスムーズな連携を構築


燃え尽き辞めていくケアマネジャー

 分からないことだらけの中、同期のケアマネジャーと連携連絡を取り、夢中に勉強し種々雑多な書類を作り、提供表を作り、給付管理を手計算手書きで行い、休日どころか、家へ帰ることもできず、体力と気力だけで仕事をしたあの頃を忘れる事はできない。
 あっちの事業所、こっちの事業所、あの人もこの人もケアマネジャー1期生皆が頑張っている。
お互い助け合い、慰め合い、知識を共有し気持ちを共有することができたことは、今の私にとって大きな力となっている。そして、あの時の苦労は、あの連帯感、顔の見えるおつきあいがなければ乗り切れなかったと確信する。
 しかし介護保険がスタートし3年半たった今、ケアマネジャー仲間も次々燃え尽き辞めていく。
新しい仲間ができてもまた辞めていく。いつの間にかあの頃のような連帯感がなくなってきた。私自身ケアマネジャー同士の連帯感がなくても業務ができるようになってきた。これはある意味ケアマネジャーの業務を私自身が理解してきたということだとは思うが、半面、他事業者や他職種・家族との連携の難しさを痛感することになった。
 自立に向けたケアプランを作れ、モニタリングやアセスメントをしっかれやれ、と言われ努力したとしても、本人家族の同意が得られない。ひとりでできるからヘルパーはいらない、訪問看護は高いからやめる、デイサービスなんて年寄りの集まるところはいや。どんなにケアマネジャーからみて必要なサービスであっても、家族や本人の拒否にあってはどうにもならない。
 介護保険スタート直後のこと、ヘルパーが毎日おむつ替えに行った家での出来事である。ある日たまたま看護師の資格があるヘルパーが訪問した。すると4ヶ所の褥そうを発見し私に報告があった。担当の他社のケアマネジャーに報告し、その福祉職のケアマネジャーと同席し皮膚科の医師に来ていただいた。医師は週3回の訪問看護を導入するように言われたが、ご家族はお金がかかるからと拒否。弊社有限会社ナースケアーは、看護師がヘルパーとして訪問することも多々ある。
 おむつ替えはその日以降看護師が行くことにしたが、ヘルパーとして行っている以上薬塗布ができない。家族の行う褥そうケアに疑問や不安を持つのだが、ケアマネジャーに伝えても、ケアマネジャーとしてもどうしようもない。家族の拒否があるのだから。
その上、福祉職のケアマネジャーは、こんな大きな褥そうを見るのは初めてで、今後起こるであろう危険を予測できなかつたのだと思う。看護師の不安は的中し、そのまま病状悪化となり、発熱し入院し、敗血症となり亡くなった。これをケアマネジャーのプランが悪いといえるだろうか。
 1日3回から4回もヘルパーを導入しおむつを替え、清拭し食事介助をするといった生活を支えるプランをしっかり作った。医療的予測ができなかったことがケアマネジャーの責任なのだろうか。家族を説得し訪問看護を導入しなかったことはケアマネジャーの責任なのだろうか。主治医でない皮膚科の医師と連携ができなかった、ケアカンファレンスができなかったのはケアマネジャーのせいなのだろうか。
 燃え尽き辞めていくケアマネジャーの多くは困難症例、問題症例に苦悩し、逃げ出していくのである。


給付管理枠内から枠外になった居宅療養管理指導料

 私がケアマネジャーの勉強を開始した介護保険スタート前は、居宅療養管理指導は給付管理内にあった。
私は、これで医師の訪問回数も私がケアマネジャーとして管理できる。在宅療養に関わる医師のプランも私が決められると思い、医師の上に立てたような優越感にひたりニヤニヤしたものである。前述の介護保険スタート直前、ケアマネジャーたちとこの居宅療養管理指導料の位置付けを話し合った時、給付の枠内だというものと枠外だというものに分かれた。
 勉強をスタートした時期の違いで意見が分かれ、結論として給付の枠外と知った時のショックは忘れられない。介護保険スタート直前給付の枠外になったいたのである。医師との連携がこれで難しくなると直感した。それと同時に、医師がケアマネジャーの計画で動くわけがないと実感した。
 介護保険スタート時からケアプランにはフォーマルサービス、インフォーマルサービスの両方を組み込むよう言われてきたが、ここにきてまたケアマネージャーに対する指導が厳しくなり、居宅療養管理指導をきちんとプランに位置づけるよういわれている。
私たちの地域では、歯科医の監査においてケアマネジャーから介護サービス計画書1.2を受け取り、ケアプランに位置づけなくして請求してはいけないと言われたそうである。
 そのため歯科医や歯科衛生士からプランをほしいと言われることが出てきた。その半面、歯科医の中にはそれが面倒なので、訪問を中止したところも多数出てきた。ケアマネジャーにとっても医師にとっても業務が煩雑すぎ、利用者にとっては不利益になっている。この現状は正しいのだろうか。ケアプランに対する行政の指導だけが一人歩きしているような気がしてならない。


あなたは居宅療養管理指導をどう考えるか?

1.在宅ケアをしている医師に聞いた
  ケアマネジャー資格のある医師は、「給付外のことまでケアマネジャーがする 必要はない」「訪問もしないで、居宅療養管理指導とっている医師もいるので困るよね」   
  「取るか取らないかは医療機関の裁量だよ」。

2.薬剤師に聞いた
  薬局はまったく同じことをしていても、介護保険と医療保険では自己負担が違ってくる。医療保険では自己負担が発生しない方が、介護保険では1回500円、2回目
  以降300円の負担である。また、所得があり、医療保険で自己負担が2割の方が、介護保険だと指導料1回目500点分が1割で済む。本当に矛盾だらけだとおもって
  いる。

3.栄養資さんに聞いた
  独立した管理栄養士は、薬局のようには認められていないのでどこかの医師に所属しなければならない。
  自分で請求することができないのがとても残念だ。私たちの活動の妨げになっている。
  以上のように、各職種ともに居宅療養管理指導に関しては大混乱といった感じである。


ケアマネジャーとしての限界
 (在宅制度を理解しない施設の医療職)


病院からの訪問看護を介護保険に位置づけようとすると、「病院は医療保険でやっているから関係ない」とうるさそうにこちらを馬鹿にしたように対応する病院の看護師や医師。「この疾病の訪問看護は、医療保険の対象なので介護保険でない」と言っても、うちの訪問看護は、すべて介護保険でやっているという訪問看護師。
 福祉職のケアマネジャーが医療を理解できないのは仕方がないとしても、病院で働く看護師、訪問看護ステーションで働く看護師は、もっともっと制度の勉強をしてほしいと思う。退院指導するにも絶対に必要な知識なのだから。こうした制度を知らない専門職の人が間違ったことを言うことにより、ケアマネジャーがとても苦労することが多々ある。ケアマネジャーに医療保険の知識まで要求するのが正しいかどうか分からないが、支援費と同様それを理解しないと利用者が不利益となることは多いはずである。
 昨年4月、4種類以上のサービスをケアプランに組み入れると計画費加算されることになった。枠内サービスのみに限られ、枠外サービスは対象にならない。ケアプランには枠内も枠外も両方入れるように指導されているのに、なぜ枠外は4種類の中に入らないのだろうか。居宅療養管理指導をケアプランに入れても、面倒なだけと考えるケアマネジャーが出ても不思議ではない。配食、外出支援も含め、この4種類加算制度も考えてもらいたいと思う。


在宅ケアの充実のためにチームケアのできる土壌づくりを

 ケアマネジャーとして居宅療養管理指導のプランへの位置づけは、かなり厳しいものがある。病院が薬剤師に薬を届けさせている。歯科医がいつのまにか歯科衛生士を訪問させている。病院の栄養士が知らない間に訪問していた。利用者や家族からの報告があるか、それぞれの機関からの自己申告がなければケアマネジャーの月1回の訪問では、つかみきれないことが多々ある。
 ケア会議に医師の同席を求めるのも、家族の方が遠慮してしまいできないこともあるし、協力的でない医師にはケアマネジャーとして依頼するのも勇気がいる。なにしろ、訪問看護指示書すら数ヶ月くれない医師がいるのが現状なのだから。
 のように、医師の居宅療養管理指導には2種類ある。ケアマネジャーがプランに位置付けるにあたり、居宅療養管理指導TにするのかUにするのかは、医師が寝たきり老人在宅総合診料(在総診)を医療保険に請求しているかどうかによる。定期往診、月1回の往診で寝たきり老人在宅総合診療料を取っていない方には、居宅療養管理指導料は請求しないという方もいるし、請求する医師もいる。
 正式には、月1回の往診だけなら、@訪問診療料を1回、A医学管理料または処置指導管理料または在宅酸素管理料など、どれか一つを月1回算定、B居宅療養管理指導料Tの3つが請求できる。また毎週往診または訪問診療があれば、訪問診療料、回数、寝たきり老人在宅総合診療料、24時間連携加算、居宅療養管理指導料U2回が算定できる。(ただし、寝たきり老人在宅総合診療料は高齢者のみなので、第2号被保険者の介護保険利用者には居療養管理指導料T2回となる)。
 月2回以上の訪問診療また往診をクリアすると在総診は算定できるが、1回では算定できない。その代わり1回の場合、居宅療養管理指導が高くなる。
 このように医師の請求は、複雑にいくつもの管理料が重なっており、普通のケアマネジャーには理解不可能と思う。またこの居宅療養管理指導料をプラン上に組み入れても,医師からの請求とケアプランを突合する事は、現状のシステムでは不可能である。極端な事を言えば、薬剤師が薬を薬局から週1回配達するだけで、1ヶ月約15,000円(本当は配達しただけではいけないのだが)、医師は、ケアマネジャーとの連絡調整という名目で、月2回以上の訪問をすれば、1ヶ月に約6,000円〜10,000円加算される。
 このような居宅療養管理指導料に比べ、最低1ヶ月1回の訪問が義務付けられ、それらすべてのサービスを調整し毎月給付管理をし、3ヶ月に1回以上モニタリングをしていくわれわれケアマネジャーの報酬が1ヶ月約8,500円とはどういうことなのだろう。非常に矛盾を感じずには入られない。
 在宅ケアの充実、ケアマネジャーやヘルパーの質の向上のためにも医師の協力は不可欠である。ケアマネジャーが燃え尽き辞めていかないためにも、チームケアができる土壌ができることを望まずには入られない。
 神奈川県厚木市では、医師会が中心となり、厚木市医療福祉連絡会ができケアマネジャー部会、嚥下摂食部会、リハビリ部会、などいろいろな部会に分かれそれぞれが活発に勉強会をしている。また、広島県尾道市のように、医師会が中心となりケアマネジメントセンターを開設し、利用者に対し100%カンファレンスをするといったことを実践しているところもある。
 生活を支えようとする在宅医療に積極的な医師が各地にたくさん出てきた。居宅療養管理指導料を適正運用するためにも、医師との連携は、ケアマネジャーにとって今後の大きな課題である。
 私は、医師会の動きが今後の介護保険の運用に大きく影響を与えるものと考える。地域格差が出る一番大きな要因が、この医師会の動きではないかとさえ思っている。医師との連携がスムーズにできると、ケアマネジャーとして、とても心強くやりやすいというのが本音である。
 今後ケアマネジャーのケアプランが、その人の自立支援を支え役立つものとなるために、居宅療養管理指導が正しく運用され、医療福祉の枠を超えたチームケアが成り立つ必要性を痛感し、また切望している。
 高齢者の生活において、病気には医師・看護師・薬剤師・PT・OT、食には歯科医・歯科衛生士・栄養管理士の存在はなくてはならないと考えている。そのためにも、居宅療養管理指導料の有効活用をケアマネジャーとして今後、今以上に精いっぱい考え努力していきたく思う。 

表   医師の居宅療養管理指導
サービスコード サービス内容略称 算定項目 合成  単位数 算定単位
種類 項目
1 1111 居宅療養管理指導T イ 医師又は歯科医師が行う場合(月2回限度) (1)(2)以外の場合             500単位 500 1回につき
1 1112 居宅療養管理指導U (2)寝たきり老人在宅総合診療科を算定する 290
   利用者に対して行った場合
1 1221 薬剤師居宅療養管理指導T ロ 薬剤師が行う場合 (1)医療機関の薬剤師の場合(月2回限度)   550単位 550
1 1222 薬剤師居宅療養管理指導T 特別な薬剤の場合  +100単位 650
特薬
1 1223 薬剤師居宅療養管理指導U1 (2)薬局の薬剤師の場合(月4回限度) (一)月の1回目の場合  500単位 500
1 1224 薬剤師居宅療養管理指導U2 特別な薬剤の場合  +100単位 600
・特薬
1 1225 薬剤師居宅療養管理指導U2 (二)月の2回目以降の場合     300単位 300
1 1226 薬剤師居宅療養管理指導U2 特別な薬剤の場合  +100単位 400
・特薬
1 1131 管理栄養士居宅療養管理指導 ハ 管理栄養士が行う場合(月2回限度)          530単位 530
1 1241 歯科衛生士等居宅療養管理指導1 ニ 歯科衛生士等が行う場合(月4回限度) (1)月の1回目の場合      550単位 550
1 1242 歯科衛生士等居宅療養管理指導2 (2)月の2回目以降の場合   300単位 300